水戸地方裁判所 平成3年(わ)400号 判決 1992年7月15日
本店所在地
茨城県土浦市富士崎一丁目一六番三号
法人の名称
有限会社ユニオンハウジング
(右代表者代表取締役 小野泰功)
本籍ならびに住居
同県新治郡新治村大字下坂田一、二五二番地
会社役員
小野泰功
昭和二五年三月三日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官神村昌通及び弁護人軍司育雄各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社ユニオンハウジングを罰金二、三〇〇万円に、被告人小野泰功を懲役一年二月に処する。
被告人小野泰功に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社ユニオンハウジング(以下、「被告会社」という。)は、茨城県土浦市富士崎一丁目一六番三号に本店を置き、不動産売買仲介業者を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人小野泰功は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人小野泰功は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、不動産売買仲介手数料収入を除外する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和六二年八月二八日から同六三年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億五六二万三、四七七円であったにもかかわらず、法人税の確定申告期限経過後である同六三年九月五日、所轄税務署である同市城北町四番一五号所在の土浦税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二三七万六、五二三円で、納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、三四八万一、七〇〇円を免れ
第二 昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七、九一五万七、二二三円であり、課税土地譲渡利益金額が六、六三三万五、〇〇〇円であったにもかかわらず、平成元年八月二四日、前記土浦税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、二九五万九、八六五円で、これに対する法人税額が八六七万九、三〇〇円であり、課税土地譲渡利益金額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額五、二一八万二、九〇〇円と右申告税額との差額四、三五〇万三、六〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示冒頭の事実につき
一 被告会社の商業登記簿謄本一通
判示第一の事実につき
一 高田晃の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の申告欠損金調査書
一 土浦税務署長作成の平成二年一二月一七日付け回答書(不同意部分を除く)
判示第二の事実につき
一 川又利光の検察官に対する供述調書
一 奥谷一裕及び堀内睦男の検察官事務取扱検察事務官に対する各供述調書
一 綿引清の大蔵事務官に対する供述調書(質問てんまつ書)
一 大蔵事務官作成の法人税査察更正決議書
判示第一及び第二の事実につき
一 定塚政利の検察官に対する供述調書
一 土浦税務署長作成の平成二年三月一四日付け回答書
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 検察官作成の平成三年七月二六日付け捜査報告書
一 大蔵事務官作成の簿外仲介手数料調査書、簿外交際接待費調査書、簿外受取利息調査書及び事業税認定損調査書
判示事実全部につき
一 被告人小野泰功の検察官に対する供述調書五通
一 同被告人の当公判廷における供述
(事実認定の補足説明)
一 被告人小野泰功及び弁護人は、昭和六二年八月二八日から翌六三年六月三〇日までの事業年度においても、被告人小野泰功に対する一か月二〇〇万円の割合による役員報酬二、四〇〇万円が被告会社の損金として認められるべきである旨主張するが、右主張は(会計処理はともかく)役員報酬が実際に支給されたことを前提にするところ、被告人小野の前掲平成三年七月一八日付け検察官に対する供述調書、同被告人の大蔵事務官に対する供述調書(質問てんまつ書)二通及び当公判廷における供述を併せ考えれば、被告会社において所定の役員報酬が支給されるようになったのは経営が軌道に乗った昭和六三年七月以降であって、それ以前は支給されていなかったことが認められる。
したがって、右主張はその前提を欠くこととなり、採用できない。
二 また、弁護人は、判示第二の事実のうち課税土地譲渡利益を争うが、被告会社の当該土地売買仲介行為が租税特別措置法施行令三八条の四第二項「租税特別措置法六二条の三第二項一号イに規定する土地等の譲渡に準ずるものとして政令で定める行為は、同号イに規定する土地等の売買又は交換の代理又は媒介に関し宅地建物取引業法四六条一項に規定する報酬の額を超える報酬を受ける行為(仲介行為という。)とする。」にいわゆる仲介行為に該当することは前掲証拠により明らかである。このような仲介行為は、実質的には土地の譲渡益を獲得したものと見られるところから、土地の譲渡に準ずるものとして譲渡と同様に重課の対象となる訳である。
(法令の適用)
被告人小野泰功の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年二月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
更に、被告人小野泰功の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金二、三〇〇万円に処することとする。
(量刑の理由)
本件は、被告人小野泰功が被告会社の代表者として、その業務に関し、昭和六二年八月から平成元年六月末日までの約二年間にわたり、地価高騰を背景に土地売買の仲介によって多額の所得を得ながら、その大半を隠して法人税合計約八、七〇〇万円を脱税したというもので、ほ脱率は一〇〇パーセント(第一期)ないし七三パーセント(第二期)にも及ぶものであって、犯情極めて悪質である。特に被告人らに有利な情状は認められないが(この点に関し、被告人小野は亡父から相続した多額の債務の存在が本件犯行の主たる動機であるかのような供述をしているが、証拠からみる限り、本件犯行によって得た所得は、本件発覚までは専ら被告人小野の手持現金、銀行預金、投資信託、貸金、韓国旅行等同被告人の個人的な利得のために使われたことが認められる。)、犯行発覚後は全面的に税務調査に協力し、(当然のことではあるが)修正申告をして本税を完納し、延滞税、重加算税等については現在も納付に努めていること、この種事犯を含めこれまで前科はないこと等の事情を考慮して刑期を定めた。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 大東一雄)